旅人教師@アジ亜太郎

道があるなら陸路で行こう。 ~貧乏人の一人旅~

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1990年代インド4 一人旅 ~くつがえる、遠慮の美徳~

 

値切る文化

 インドでは、「生きている者」対「生きている者」の熾烈な争いがある。提示されている値段は交渉前の、割高価格だ。もしかしたら、全世界そうなのだろうが。

 どこの国でも、「お金」というものは、人の悩みをほとんど0に近づけてくれる。いわば、「現代の魔法」のようなものだ。インド人にとっても、それは当然。人が2人以上集まると、お金を巡っての小競り合いをする。どこの国でも同じ感覚だ。

 

 

が、日本人は、「遠慮の美徳」があるので、値切ることを恥ずかしいと感じる。インド人は違う。さも無邪気に100円のものを「200円だ」と言ってくる。

「100円に負けろ。」

と言うと、

 「じゃあその真ん中の、150円だ。」

と言って成立させてくる。ときどき、ぼったくりたい気持ち満載で言ってくるので、「無邪気な幼さ」を感じるほどだ。

 

 コンノートプレイスへ行くためのタクシーは、150Rsと言ってきたが、120Rsに負けてもらい、宮原君と共に乗り込んだ。

 デリーは深夜でも、首都だけあって人や車もまだ多い。

 インドの街並みを眺める。電灯の数は多くない。きらびやかなネオンがあるわけでもない。暗い中を、ただ、人と車が動いている。

 

「大豪邸や…。」

 10mほどの高さの玄関口。これはホテルか?ホテルだろうが、すげえ華やかな建物だ。建物はライトアップされ、幻想的な雰囲気。でっかい玉ねぎ屋根、宮殿のようだ。 下を歩く人がちっぽけに見える。インドのマハラジャはこんな家に住んでいるとも聞く。もしかして個人の家かも知れない。

 

 実は、今乗っているタクシー、運転手男と助手席男のインド男二人組のタクシーだった。普通運転手だけやろ、と思うが。男二人組ということは、乗るまで気づかなかった。それに、他のタクシーも必死に「ミスター俺のタクシーに乗りな!」と声をかけてくる。どいつもこいつも怪しく見える。だから、男二人組タクシーの怪しさは、かき消されていた。

 

タクシーのメーターはぶっ壊れていて動いていない。

 窓も壊れていて、開かない。

 男たちがなにやら話しかけてくるが、何を言っているのか、意味がわからない。

時々、ゲラゲラと笑って後ろを振り返ってくる。

 

「アイドンノー」

そう、つぶやき。

俺は、この先の旅で、何度かこの場面を思い出した。

なんとなく嫌な雰囲気。 

 

インドか。まだまったく、つかみどころがない。 

コンノートプレイスってどこなんや?ほんまにこの道でおーてるんか?

右も左もまったくわからんからなあー。

 案の定、コンノートプレイスとは全然ちがう所に連れて行かれた。

 おい!どこに公園があんねん!

 

「ここで降りろ。」

 タクシーは停まった。車から降りた。

 インド男の二人組が、5~6人に増えていた。

 なんとなくやばい雰囲気。目の前に、深夜にもかかわらず煌々と明かりのついた小さなオフィスがある。男たちはそこから出てきたようだ。

「ちょちょちょ…。」

 宮原君があわてている。俺もあわてている。

 

 俺たちのバックパックは、タクシーのトランクにある。

「トランク開けてくれ。」

というと、わりとスムーズに開けてくれたので、助かった。

 

「おまえたち、デリーの町は今は危ない。」

「今夜、爆弾テロが起きたから、このままうろうろすると危険だ。」

 だから、オフィスに入れというのだ。

 

 うまいこと言うな~…。それは信じるやろ~。今、インドきたばっかやし。生きた情報まったくないんやから~。え、まじで。てなるやろ~。

 でも、答えは

「No」だ。

 

 でも、行かせてはくれない。

 周りを複数人のインド男たちに囲まれている。

「大丈夫だ、ここは政府の経営だ。とりあえず入れ。」

 

 またもや、うまいこと言うな~。ガバメントパワー出すか。一瞬安心するやろー。

 

 でも、俺たちの答えは

「No。ホテルの予約があるからもういい。行くから。」

だ。

 立ち去ろうとしたら、インド男らは、俺の腕を持ってオフィスにひっぱりこもうとした。

「デリーの案内は、30ドルだから入れ!」

 

「No!ええ加減にせえ!はなせや!」

「やっぱぼったくりツーリストオフィスやないかいや!ウソから入るところが信用ないねん!!」

と叫ぶ。その場はにらみ合いになる。腕は離してくれた。しばらくの沈黙のあと、俺たちはその場から去る。ほんまは、ちゃんと「コンノートプレイスにつれていかんかい!」だがそんなことは、もう一瞬も望んでいなかった。

 

 その場から、数十メートルほど離れた。

「やっべ~。怖かった……。なんやあいつら、ほんまちびりよったわ。」

「やばかったなあ。カバン返してくれなかったら、どうしようかと思った。」

「宮原君、タクシー降りるときめっちゃ焦ってたなあ。」

「やばい、思ったから早く降りようとしたら、つまずいたわ。」

 

 ほんま、ちびりよった。いきなり泣きそうやったわ。

 

はよ、宿探そ。

 道全然わからん。宿はどこにあるんだろう。

俺と宮原君はおそらく1~2時間ほど歩きまわっただろう。

 

 首都といえども、灯りはすくない。暗い夜道だ。

 二人で良かった~。ここで一人やったらほんまにやばい。泣くかも。

 

 途中、ばかみたいにでかい箱をもったインド親父が道を教えてくれた。

 首都の大通りだが、牛が鳴きながら、のっそのっそと歩いていく。気を抜くと牛のふんを踏んでしまう。

 自転車のサドルの上で、ばりくそ器用に寝ているガリガリのインド人がいる。

 黒いターバンをかぶった男に話しかけられると、話す前に人を判断してしまう。

 親切な人なんかもしらんけど。今、こんな目にあった状態やから、そっとしといて。である。夜道を進むと、ゲストハウスのある通りに出た。

 一人一泊200Rs。

 

 やっとホテルの部屋に入れた。

ようやく寝ようとする頃、時刻は深夜3時だった。

シャワーもない。

トイレはあるが、便座がない!

 

 そんなホテル。

 やっと寝れるわ。

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